ベトナムで感じた「曖昧さの美学」-グローバル人材育成のヒント

現在、ベトナムでの研修プログラムを進めていますが、こちらの文化や働き方の特徴が非常に興味深く、グローバル人材育成の視点で多くの気づきを得ています。

まず、ベトナムの職場環境や日常生活には、私たちが持つ「ルール」や「形式」といった概念が、かなり柔軟で曖昧に運用されている部分があります。たとえば、ローカルのカフェに行くと、従業員たちは非常に自然体で働いています。仰々しい挨拶もなく、肩肘張らずに、お客さんとの距離感がちょうどよく保たれている。このカジュアルさが、逆に業務がスムーズに進んでいる要素に見えます。お客さんも、まるで近所の知り合いと会う感覚でコミュニケーションを取っているんです。

さらに面白いのは、この「曖昧さ」が単なるサービス業だけに限らないという点です。例えば、カフェの中では、別の商売をする人が突然現れます。宝くじやピーナッツなどを売りに来る人がいても、特に問題視されることなく、お店の中で商売をしている状況が日常的に見られます。この柔軟さが、ベトナム社会全体に流れる一種の「許容力」の象徴ともいえるでしょう。

この「曖昧さ」は、ベトナムにおけるビジネス環境や働き方の根幹に関わっています。例えば、規則が明確に決まっていない部分や、状況に応じてルールを柔軟に解釈する文化があるため、日々の業務や交渉が進行していく中で、新たなアイデアやアプローチを実行に移しやすい。この点は、グローバルな視野で活躍する人材にとって、柔軟性や順応力を養う上で非常に有益だと感じています。

こうした環境で働くことで、派遣された社員や研修生は、ルールに縛られず、状況に応じて対応を柔軟に変える力を身につけることができるはずです。日本では明確な手順や規則が重視されがちですが、ベトナムではそれが「グレーゾーン」として存在し、社員自身が状況を判断し行動できる余地が広がっています。結果的に、自らの介入力や存在価値を高め、より自律的に課題に取り組むスキルが養われるのです。

ベトナムは経済成長を続ける中で、こうした曖昧さと柔軟さを武器に、ビジネスの可能性を広げています。この国での派遣や研修は、単に語学や文化理解だけでなく、変化に適応し、柔軟に対応できる力を育む貴重な機会となるでしょう。日本国内でのマニュアル化された業務プロセスに対する新しい視点を得ることができるはずです。

グローバル人材育成を考える上で、ベトナムのような「曖昧さの美学」を体験できる環境は、将来のリーダーにとっても大きな価値を持つと確信しています。