異国で奮闘する日本人経営者の言葉 ー ベトナムで事業・組織を創るということ

先日、ベトナムでメガネ店を立ち上げ、10年以上も事業を続けている日本人経営者の方とお話をする機会がありました。異国の地での経営と聞くと挑戦的で華やかな面が想像されがちですが、実際には苦労と試行錯誤の積み重ねがその背後にあるのだと感じさせられました。その方がぽつりと語った「この10年、人に悩まされ、人に助けられてきた」という言葉がとても印象的でした。

その言葉の通り、異国で働くということは、単にビジネスの拡大だけでなく、人間関係の試練でもあるようです。例えば、現地スタッフに期待を込めて役割を任せても、文化や価値観の違いから予想外のトラブルが起き、信頼関係を築くまでには多くの時間と調整が必要だったりします。時には、裏切られたように感じて苦い経験をすることもあるといいます。しかし、その一方で、自分が困難に直面している時、現地のスタッフが支えてくれる場面があるとも話していました。言葉が通じなくとも、同じ目標に向かって歩む「仲間」がいるという実感。それが、異国で働く者にとってどれほど大きな支えになるのかが伝わってきました。

「顧客に価値を届けることがもちろん大切。でも、それと同じくらい、職場そのものにも価値を感じられることが重要だと思うんです」。この言葉には、彼が築き上げてきたベトナムでの経験が凝縮されています。現地でともに働く仲間が、そこにいることでいきいきと活躍できる職場――つまり、単に利益や効率を追うだけではなく、共に働くことに誇りと喜びを感じられるような職場をつくりたいという彼の思いがにじみ出ていました。

こうした異国での試練と達成が重なる中で、経営者も社員も一歩ずつ成長していくのかもしれません。文化の違いに戸惑いながらも、現地で出会った人々と共に働くことで、その土地ならではの信頼関係や充実感を得られる――そんなベトナムでの経験ができたら、日本から研修に来た日本人の研修生の人生とってかけがえのない財産になると感じさせられるひとときでした。