主体的な挫折が生む、学びへの意欲 〜経験学習を活かす教育の本質〜

主体性と経験学習の力

人材育成に携わる者として、教育や研修の場で「教えること」だけに偏る危険性について改めて考えさせられる1日でした。午前中、過去に海外研修プログラムを共に企画したパートナーとのランチミーティングを通じて、「教える」と「経験させる」のバランスについて議論しました。その中で、特に印象的だったのがパートナーの娘さんのストーリーです。


パートナーの娘さんの挫折と経験学習のプロセス

パートナーの娘さんは、希望する大学ではない学校に進学した後、キャリアセンターの担当者から「皆さんは負け組」というニュアンスを伝えられました。その言葉が象徴するように、学歴や偏差値を基準に評価される現実が、彼女にとって耐えがたいものでした。

その結果、彼女は21歳で大学を辞めるという大きな決断を下しました。父親であるパートナーさんはその決断を尊重し、一切反対しませんでした。むしろ「自分で考えて出した結論なら、それを支えよう」というスタンスを貫いたのです。

大学を辞めた後、娘さんは半年間アルバイトを続ける生活を送り、その中で「何にも所属しないこと」の辛さや社会での孤独感を痛感しました。この期間が彼女にとって大きな転機となり、彼女は次のステップをこう決めました。「もう一度学びたい」「アルバイトをしながらでも学べる環境を探したい」と。そして彼女は初めて自らの意志で親に相談をしました。

その後、娘さんはオンラインで受講できるイギリス国立大学のプログラムに挑戦し、現在はさらなる学びと留学を目指して日々真剣に取り組んでいます。


経験学習がもたらす主体性

このストーリーから明らかなのは、「経験そのものが学びの出発点になる」ということです。パートナーさんの娘さんの場合、自分自身で挫折を経験し、その中で得た気づきが彼女の新たな学びへの強い意欲を生み出しました。

教育や研修において、教える側が一方的に知識を伝えるだけでは、このような深い学びは得られません。むしろ、「まず経験させる」「自ら行動する機会を与える」ことが重要です。その経験を通じて参加者が自分自身で気づきを得られるよう、適切なサポートを提供すること。それが教育者や研修担当者の役割ではないでしょうか。


海外研修の設計に活かす経験学習

海外研修は、経験学習の要素を取り入れる絶好の機会です。以下のポイントを意識することで、より効果的な研修が設計できると考えます。

  1. リアルな経験を提供する 研修中に現地の課題解決や実務を体験させることで、受講者がリアルな状況に直面し、自分の力で乗り越える感覚を得る。
  2. 内省の時間を組み込む 日々の経験を振り返り、何を学び、どのように次に活かせるかを考える時間を設けることで、学びが深まります。
  3. サポートと挑戦のバランス 一方的に教えすぎず、受講者が自分で考え行動する余地を残しつつ、適切なフィードバックを提供する。

最後に

私たち教育や人材育成に関わる者にとって、「教えること」よりも「経験させること」、そしてその後の内省を促す環境づくりが重要であると改めて感じました。この考えを海外研修や日々の教育活動に活かし、「教えない教育」を追求していきたいと思います。